星の自然の家



自然の中で共同生活をしながら、地域の小学校に通う山村留学の子どもたち。星野村の豊かな自然に見守られ、感性を育むかけがえのない一年がある。ここは、山村留学の子どもたちが暮らす場所、星野村山村留学センター「星の自然の家」。この取組みは平成2年にスタートし、今年で26年目を迎える。留学受け入れは小学3年生から6年生まで。1年間という期限がある。子どもたちは共同生活をしながら、地元の小学校に通い、山村ならではの体験を重ねていく。

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平成27年度は、学年も様々な男子5名女子3名、計8名の子どもが留学中だ。彼らがやって来るきっかけはそれぞれで、たまたまテレビや雑誌で取り上げられているのを見て関心を持ったり、口コミによるものだったりする。元々の居住地も様々で、近隣の久留米市からの子もいれば、遠く関東からやってきた子もいる。施設の規模や指導の行き届く範囲もあり、受け入れ数は限られているが、毎年定員以上の希望者があり、全ての親子に面接をして選考を行っている。ここでの生活は、テレビを見ることができない。ゲームも携帯電話もない。朝は6時に起床、掃除当番があるし、日々の洗濯だって自分でやる。剣道と、和太鼓の稽古への参加は必須。自宅に戻れるのは、夏休みと冬休みのみだ。それらの事も説明し、できるかどうかを、親子に問う。留学予定の年に小学3年生になる子など、面接時にはまだ2年生。子どもだけでなく、親にとっても勇気ある決断となる。山村での生活は、案外忙しい。はじめは緊張していた子どもたちも、ホームシックはそこそこに、すぐに仲良くなって遊びだす。土日の過ごし方に、山村留学ならではの大きな特徴があり、自然の中で存分に遊ぶ事はもちろん、タケノコ掘りやお茶摘み体験、田植えの手伝い、稲刈り、もちつき、お祭りなど、自然体験や地域の行事に呼ばれて参加することが多い。山村留学の子どもたちにとっては都会でなかなかできない事が体験できる機会だ。地域にとっても、地元の児童が少なくなったこともあり、山村留学の10名近い子どもたちが揃って来てくれれば、場がぱっと明るいものとなる。ここでは、留学生の子どもたちは人気者だ。学校が長期の休みになるまで親とコミュニケーションが取れないかというと、そうではない。小学校のPTAの集まりや、こうした地域の行事がある際には親に声をかけ、予定が合えば、参加してもらっている。山村留学センター長であり、子どもたちの指導にあたる石川信男さんは、親たちに「新しい親戚ができたと思って、いつでもここに来てください。一緒に語らいましょうよ」と言っている。お酒やつまみを持参して、ここに泊まっていく親たちもおり、自然と保護者間でも仲良くなっていくという。大人にとっても、ここは特別な場所となる。町を離れのびのびと遊ぶ子どもたちを見つめ、会社や社会のしがらみと関係ない地域の人々とふれあうことで、本音が語られる瞬間があるという。地域の子どもたちも、山村留学生と関わる事で変化があった。児童数の少ないこの村では幼稚園から中学生まで同じ顔ぶれで過ごす事になるが、他所からやってきた子どもに刺激を受け、村外の視点を意識しながら地域を見つめ直すことでこの村のいいところを探し、好きになるきっかけになっている。春が来れば、また新たな子どもたちがやってくる。石川さんは、こう語る。「1年たって、何が変わるかっていうと、変わらんです。自宅に戻って、3日くらいはここの暮らしと同じように、しっかりお手伝いをしたり、挨拶したりするけれど、4日目には戻ってしまうこともある。子どもだから、しょうがないんですね。劇的に変わるわけではない。けれど、たかが1年、されど1年。5年後、10年後、20年後、ここでの暮らしがどこで花開くかは、ぼくらも分からない。この先、自立する時に手助けのひとつになってくれたらと。この子たちがここにいた意味っていうのは、子どもの数だけあるから」。目には見えないけれど、山村留学を経験した子どもたちにとって、星野村は人生を見守り続ける心のふるさとになるのだ。

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