島唄の姫



「ハレーイ まれまれ なきゃばぁうがでぃ」(朝花節より)。青く透き通った美しい海辺に、三味線の旋律としなやかで張りのある歌声が響きわたる。川畑さおりさんの島唄を聴いた瞬間、喜界島に来て初めて島の心に触れたような気がした。朝花節は、最初の挨拶に必ず登場する島唄だ。「久しぶりにあなたにお会いできて嬉しい」。そんな意味が込められているという。

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島唄は楽譜がなくて口伝の世界だ。知られる機会がなく、受け継ぐ人がいなければ地元に残る島唄は途絶えてしまいかねない。昨今は奄美大島の唄が島唄の定番として歌われるため、喜界島の伝統的な島唄の多くは埋もれている状態だという。さおりさんは平成23年度から3年間、文化庁の助成による「奄美島唄保存伝承事業」の調査に参加。喜界島に伝わる島唄を掘り起こし、歌詞や音声などの資料を集めたり、記録保存するための活動にもかかわり始めた。最近は80〜90代の方々から昔の様子を聞いたり、昔から伝わる島唄や言葉を教えてもらう機会が増えたという。「見て聞いて体で覚えるだけでなく、自分の感じたことを即興で歌うという要素が入るので、島唄は本当に難しい。できるだけ今のうちに調べて覚えて残していかなければと思います」。方言の伝承においても島唄は貴重な存在だ。奄美地方の方言は、平成21年2月にユネスコ(国連教育科学文化機関)が消滅危機にある言語のひとつとして認定している。「私の同級生はほとんど方言を話すことができなくて、聞くだけとか、聞くことすらできない人もいます。島唄を通じて島の方言も大切にしていきたいですね」とさおりさんは語る。島の人々が楽しいひとときや様々な人生の節目を思い出す時、そこには必ず島唄がある。島では行事や人が集まるたびに島唄が登場し、みんなで賑やかに踊り出す。「現地で島唄を見たり聴いたりすると感動が違います。喜界島にもぜひ多くの方に足を運んで頂いて、島の心を感じてもらえたら嬉しいですね」。

 

TEXT : MICHIKO TAKASAKI

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