蜂と会話ができるから



蜂の習性を知り尽くした富永朝和さんは、蜂の世界の常識では考えられないことを次々と成し遂げてきた。普通は一つの巣には一匹の女王蜂が君臨し、二匹以上が共同生活することはできない。ところが、29匹の女王蜂の共同作業により、世界最長のハチの巣を作らせ、その後は114匹の女王蜂による世界最巨の巣づくりに成功。その表面に〝ハチ〞という文字まで描かせた。

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「全国の学者たちはそんな馬鹿なことは絶対できないって。でも実際にできとるから、みんなびっくりしちまった」生物学的に起こり得ないことが可能になるのは、「蜂と会話ができるから」という。会話とはいえ、言葉を交わすわけではない。蜂は喜怒哀楽を動作で示し、怒っているのか、ご機嫌なのかは羽音でわかるそうだ。「蜂と向き合う時は、一つひとつの動作が大切。蜂の顔に指先や顔を近づけて、怒らせないように話をするの。普通の人が同じことをやれば、すぐにぼこぼこにされるけどね。おっかないという気持ちがあると、だめなんだよ。わずかなことでも蜂はわかる」 蜂に人生を捧げる富永さんが、特に力を注いできたのがニホンミツバチの養蜂だ。商業的な養蜂で用いられるのは、人間が扱いやすく、集める蜜の量が多いセイヨウミツバチがほとんど。一方、ニホンミツバチは自分たちで生きていける力を持ち、人に何かをされることは大嫌い。「下手に世話をすると、勝手なことするなと怒っちまう。自分でもっといい環境見つけてそっちでやるからってね」という。それだけに飼育は難しいが、日本の気候に適応し、気性がおとなしく、病気にかかりにくいなど、そのよさが見直されている。集める蜜の量は少ないが、その栄養価はセイヨウミツバチと比べてはるかに高い。

 

TEXT : ATSUMI NAKAZATO  PHOTO : KENTA SASAKI

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中川村