自分ごとではなく



この店の前に立った時、心地よい風を感じた。そばには川が流れ、山も近い。真向かいには小さな神社もある。古くは街道で、人が行き交う交通の要所だった。そんな通りの一角に、今年4月自然食専門店「たろう屋」がオープンした。店主は、新潟県出身の宮崎太郎さん。飯田市の自然食品店で10年間働いた後、2011年に独立。地元の無農薬野菜などを軽ワゴン車に乗せて移動販売を始める。震災がきっかけだった。「大きなことがあっても続けていける仕事がしたいと思って始めました。自分ごとではなく、いかに人のために仕事ができるのかを自分自身に問いかける場として、この店をやっていきたい。

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まあ、そんな立派なものではないんですけどね」店内に並ぶのは、地元野菜のほか、平飼い卵、天然酵母パン、無添加調味料などからだに優しい食品ばかり。妻で陶芸作家のあづささんをはじめ、中川村周辺の工芸作家の作品が並ぶギャラリーも併設する。午前10時の開店前から、小さな子どもを連れた母親たちが次々と訪れ、にぎわいを見せていた。ここはかつても食料品店だったそうだ。「当時を知る地元の人から、『ここでアイスキャンディーを買った』とかいう昔話を聞くのも楽しい」という。時代がめぐり、ここはまた地元の食と人が出会う場所となった。

 

TEXT : ATSUMI NAKAZATO  PHOTO : KENTA SASAKI

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中川村