東京の人たちには悪いね



村の中で最も奥地にあり、山々が眼前に迫り立つ釜沢地区。圧倒的な風景だけでなく、この村の人々に惚れ込み、この地に移住して28 年。敏子さんは村の観光案内所で働き、修さんは伊那谷の風物を切り絵で描き続けてきた。今では村人として、また大鹿村のファンの一人として、全国で村の魅力を広めている。

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「ここに来て、本当によかった。東京の人たちには悪いね」敏子さんは、話の途中で何度もそう言って笑いを誘う。柳下さん夫婦は、87年に東京から移住した。若い頃はともに劇団に所属し、演劇に没頭。その後、二人で小さな町工場を始めた。休日に各地を旅することが楽しみだった二人は、偶然訪れた大鹿村の迫力ある自然と穏やかな村人たちに惹かれ、毎年季節ごとに訪れるようになる。そのうちに、大鹿村を多くの人に紹介したいと、町工場をやめて居酒屋を開業。そして村に通い始めて13年目に、とうとう住み着いてしまった。敏子さんは村の観光案内所で働き、修さんは伊那谷の四季折々の風景や民俗芸能を切り絵で描いてきた。毎日二人で観光案内所に出勤し、修さんは奥の机で切り絵に打ち込み、敏子さんは来訪者の世話を行う。明るく楽しい柳下さん夫婦に魅せられ、多くのリピーターが生まれたという。「暮らしていてすべてが幸せ。これって一点は挙げられない。要するに幸せなんよ」と敏子さん。20年にわたり、村の顔として働いたが、8年前に退職。一方、修さんは81才にしてまだまだ現役の切り絵作家として、制作を続けている。今は夫婦でのんびりと暮らしながら、全国各地で村のPRを兼ねて切り絵の個展を行う日々。大鹿村の魅力を村人以上に熟知している二人は、これからも二人三脚で村のよさを伝えていく。

 

TEXT : ATSUMI NAKAZATO  PHOTO : KENTA SASAKI

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