店長が集まるカフェ
「本当にこの先にカフェなんてあるのかな……」そう不安になるほど何もない山道を登って行くと、申し訳程度に掲げられた小さな木の看板に「cafe」の文字に出会う。そして、看板をいくつかたどると、古民家が見えて来る。「シェアカフェ『一樹の庥(いちじゅのかげ)』」。東京にいると、探さなくとも見つかるカフェだが、上勝には現在この1軒のみ(2013年5月現在)。センス良く改装された空間で、町内で唯一洋食ランチができる場所ということもあって、なかなか不便な立地にも関わらず、毎日、町内外から人が訪れる。実は、シェアカフェの店長は毎日変わる。私たちが訪れたこの日、忙しそうにキッチンと客席を行き来していたのは、ベジタリアン料理家の石川かずこさん。ひよこ豆で作ったベジ・ハンバーグに新鮮なサラダ、そして、食べ放題の自家製パン。どれも彼女自身が自らの店のメニューとして決めたもの。「東京に長く住んでいたけれど、子どもが大きくなったのを機に新しい生活をしようと場所を探してたどり着いたのが、結局、地元徳島でした。自然豊かな場所でベジタリアンカフェを持つことが夢だから、ここで『1日店長』にチャレンジすることから始めてみようと思って」現在、石川さんを始めとする16人ほどの店長がその日ごとに料理を提供して店を切り盛りしている。